
日本の美意識を象徴するキーワードに「粋」があります。広辞苑によれば「粋―気持ちや身なりのさっぱりとあかぬけていて、しかも色気を持っていること」。日本独自の文化が花開いた江戸時代に生まれた概念です。 江戸時代は庶民の時代。贅沢を禁じる奢侈禁止令により華美な装飾は避けられましたが、派手ではないが地味ではない、洗練された装いがよしとされるようになりました。 無地の羽織の裏には手の込んだ柄を配したり、家紋や柄物に言葉遊びを取り入れたりする江戸っ子のお洒落は、粋の賜物。また、使い込むことで色あせたり、擦り切れたりするのも味わいのうちとされました。一つのものに愛着を持ち、長期の使用に耐える良い品を選ぶの庶民の知恵です。